ブックタイトルほんもののたたみ | 畳屋道場

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概要

畳屋道場は「ほんもののたたみ」をお届けします。

30光嶋今の建築にも時間軸が欠如しています。竣工、引き渡しのその場がよければいいという発想。経済行為としてはそれでいいかもしれませんが、僕は建物が完成し、そこから始まるのが建築だと思っています。竣工に向けて仕事をするが、その後が気になる。特に土壁や畳、木材など、本物の素材にはさまざまな物語があるはずです。「京都のこういう山で切り出された木だ」「畳は八代のい草からつくられている」とか、そういう物語をしっかり語り継いでいけば、物を大事にします。そして愛着が積層していけば、住まう人たちによる物語がそこに生まれます。僕は建築という領域でそういう物づくりをしたいと常々考えています。鏡極論すれば人間は畳がなくても生きていけます。経済合理性だけを追求していては、突破口が見えてきません。日本の気候風土の中で生まれた畳が醸し出す暮らしの中での「ゆとり」や「うるおい」といったことを提示しながら、畳に触れてもらう機会を増やすことが大切だと思っています。その具体的な取組が畳屋道場です。全国の畳屋さんに声掛けし、ネットワークを築き、「畳を語れる畳屋さん」を増やしていきたい。現在加盟店舗数は12ですが、2年以内に2 00から2 50店舗を目標に、国内各店舗で、「正直たたみ」を施工可能な状態にできるようにしたいと思っています。畳表の仕入れ単価を上げ、い草農家の収益率を高め、後継者も育つようにしたいのです。い草農家がなくなると一番困るのはわれわれ畳屋ですから。光嶋年間い草農家の1割が廃業するといわれています。いつの間にか熊本県が日本一のい草の産地から〝唯一?の産地になっていた。僕は「建築家としてできることは、何かないか?」そう思い続けています。い草の良さをちがう形で使えないかと。畳は転用可能なものだと思う。和室にとらわれず、壁材とか家具とか、畳の新しい使い方を提案し、畳文化がちゃんと生けていける土壌を作りたいと思っています。和室に靴で上がる外国人みたいな子どもたちがいる時代に、畳離れの深刻さを嘆いても始まりません。建築家としてできる、自身の身の丈にあったことがあるはずで、それを発見し、仕組みをつくること、時間に堪えるものづくりをやっていきたいと思っています。鏡畳は、もはや嗜好品だと捉えたほうがいいかもしれません。みんなが使うものではなくなったのです。私は、畳屋道場の活動を通して、いい物を長く使う、そういう価値感をお客さまに伝えていきたいと思っています。そして、国産の畳と農業の物語を発信していきたいと考えています。光嶋建築家である僕は、経済効率を優先した都市におけるスクラップ&ビルドに加担している側面があります。その一方で、何が時間の経過に堪え得るかを常に考えている。今日、ベイシーに来ることができて感無量です。信じられない数のいろんな物がここにはある。僕はここに時間の積層を感じます。そういう意味で、いい年の取り方をする建築物をつくりたい、いつかその状態を見たいと思っています。僕の建築は完結しないんです。設計者としての想像力を鍛え、多様な組み合わせの中に畳を取り入れたい。土や木やい草などそれぞれにある物語をどう汲み取って組み合わせるか、建築でこれを発見していきたい、そう願っています。それが畳の魅力の再発見につながればうれしい。僕が設計した建物に鏡さんの畳を敷けばいいというのではなく、皆さんと一緒に長い物語を大きな射程の中で描き、畳のポテンシャルを引き出す仕組みを、建築を通して実践していきたいと考えています。鏡例えば和室のイメージを破った畳の部屋がとても落ち着ける空間であるといったような、そういう建物を既存の枠組にとらわれずに発想できるのが光嶋さんの強みだと思っていますので、これからの新しいクリエーションに大いに期待しています。[特別コメント]若いお2人が、「よくぞ言ってくれた!」と思わず膝を打つ対談だった。新しいモノを否定したり拒絶するつもりはさらさらないが、僕自身は、古く長く使用に堪えてきたモノに信頼を置き、愛着を持つタイプ。アンプもスピーカーも万年筆もカメラも、すべからく古いものだ。ベイシーのこの蔵も百年以上経つ。ホンモノは年月とともに味わいを増し、なじんでくる。八百長的なつじつま合わせがまかり通る時代にあって、2人の対談は心底共感できるものだった。最後に一言。僕は畳の味方です。寝床の理想型は畳に数枚座布団を敷いて寝るに限ると思っているのだから。菅原正二(ベイシー店主)